
国税専門官と聞くと、その名前のイメージから、非常に冷血・機械的で、固い職業のような印象を受けるかも知れません。
しかし、仕事をうまく進めるためには、納税者とのコミュニケーションがとても大事です。
人と人との信頼関係を築いていく、実はとても人間味のある仕事です。
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1.国税専門官の仕事
国税専門官の使命は、法人税や所得税、消費税などの課税や徴税を通じて、公平で公正な社会を実現するために、国の財政基盤をつくることです。
国税専門官は、全国で一斉に実施される採用試験に合格した者の中から、各地にある国税局が採用します。
採用後は、埼玉県にある税務大学校での研修を経て、採用された国税局管轄下の税務署に配属され、業務に就きます。
国税専門官はその名の通り税のスペシャリストですが、その業務には大きく分けて国税調査官、国税徴収官、国税査察官の3つがあります。
国税調査官は、納税者から提出された確定申告書などをチェックして、必要に応じて指導などを行います。
国税徴収官は、期限までに納付されない税金の督促などを行って、確実な徴収に努めます。
国税査察官は、裁判官の許可を得て悪質な脱税者に対して強制調査を行い、検察官に告発します。
このように、国税専門官と一口に言っても、その業務内容は多岐にわたっています。
一例として具体的な仕事内容を上げると、法人を訪問し、税金調査 元帳、原始証憑、資料をもとに納税者に質問し、確認します。その後、税金が適正に申告されているか調査します。申告が適正でなければ修正申告を出してもらい追徴税額、加算税、延滞税を納付してもらいます。
2.国税専門官の年収と初年度の収入
国税専門官の収入は、勤務する地域によって異なります。
これは、公務員全般に共通することですが、地域によって物価や賃金の水準が異なるため、全国どこでも同じ給与水準になるように調整されるからです。
物価が高い地域では給与も高くなり、低い地域では安くなります。
日本で最も物価の高い東京都特別区内勤務の場合は、初任給で245、160円となっています。
この金額は基本給の月額で、それに扶養手当や通勤手当、住居手当などが加算されます。
また、いわゆるボーナスである期末手当・勤勉手当も年2回(6月・12月)支給されます。
国税専門官ではない総合職の国家公務員(いわゆる「キャリア組」)では、月額219、240円となっています。
専門知識を有する税のエキスパートであることを踏まえて、若干高い水準に設定されていることがわかります。
また、やはり公務員であることから、収入以外の待遇面(福利厚生や出産・育児に関する支援など)でも非常に恵まれています。
年収の平均は450万円から500万円位です。
3.良いところ(やりがい)と悪いところ
国税専門官のやりがいとして一番に挙げられることは、税のエキスパートとして、社会に貢献できることです。税の徴収のためには、捜査令状も必要としません。国家権力のもとで仕事ができます。
税の公平を実現して、国が様々な行政活動を行うための基盤をつくります。
また、様々な企業を訪問して経営者と話をしたり、個人宅で相続の相談に乗ったりと、多くの出会いがあります。
出会いを通じて、自身の成長を実感できるとともに、他の仕事では経験できないような貴重な経験ができるのは大きな魅力だと言えます。
さらに、国税査察官であれば、悪質な脱税を摘発するという社会正義を実現することができます。今の社会の現状や裏側の実情をを知ることが出来、人間的に成長できます。様々な研修があり、キャリアアップが図れるのも良い点です。
税理士試験免除制度もあり、勤続10年からは税法免除、勤続23年は簿財免除を受けられます。
確定申告の時期以外は勤務時間は比較的短いのも良い点です。朝は7:30出勤ですが、夜は18:00には帰宅できます。
他方で、税金は本来「納める」ものですが、「取られる」ものと考えている納税者も多く存在しているのが現実です。
そうした人々の感覚では、国税専門官や税務署に対して、税金を取りに来る悪代官のような印象を持っていたりもします。
その意味で、納税者からのクレームや厳しい目線を向けられることもあり、この点が悪いところと言えます。
このようなことがストレスとなって、退職せざるを得ないケースも残念ながらあります。
4.国税専門官をテーマにした作品
国税専門官を主人公として扱った作品として、有名な伊丹十三監督の「マルサの女」という映画があります。
マルサとは国税査察官のことを指す符牒(ふちょう)です。
この映画では、主人公である国税査察官が、プロとしてのプライドと信念を強く持って、毅然とした態度で脱税という犯罪に立ち向かう姿が、格好良く、そして人間臭く描かれています。
それはとても素敵なことで、国税専門官の仕事の魅力を大いに伝えてくれますが、最後のシーンではちょっとした「オチ」が付いています。
詳しくはネタバレになってしまいますので伏せますが、キレイことだけでは済まない、社会の奥深さを感じさせてくれる作品です。
この他にも国税査察官、マルサを題材とした作品はいくつかありますが、珍しいものでは国税徴収官を取り扱った作品として、高殿円の小説「トッカン-特別国税徴収官-」があります。
この小説は井上真央さんが主演でドラマ化もされました。
国税専門官を目指し、税のエキスパートになろう
国税専門官の仕事は、ストレスを感じることもありますが、やりがいがあって収入も比較的良いと言えます。
国税専門官になるには、まずは採用試験に合格する必要がありますが、近年では採用予定者数を増加させる傾向があり、倍率は徐々に下がってきています。
税のエキスパートとしてキャリアアップしていくことに興味があるなら、国税専門官はとても魅力的な仕事です。