
音楽が好きな人にとって楽器演奏を専門とする仕事に就くことは、夢の実現につながる職業選択です。
楽器演奏者として生計を立てていくのは大変だとも言われていますが、実際の収入状況はどうなのかを調べてみました。
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1.コンサートでの演奏が仕事の中心
クラシックやロック・ポップス・ジャズなどジャンルごとに演奏のスタイルは異なるため、以下では主にクラシックの楽器演奏者を例に仕事内容や収入について見ていきます。クラシック音楽の演奏を行う楽団員の仕事は定期演奏会や地方公演などのコンサートが中心で、本番に向けてのリハーサルだけでなく日々の練習も仕事のうちに入ります。
所属するオーケストラによっても練習やリハーサルのやり方に違いが見られますが、楽団員全員が揃って合同練習を行うのはコンサートの数日前からというのが一般的です。曲によってはピアニストやバイオリニストなどのソリストが加わる場合もあって、そうしたソリストはオーケストラとの共演だけでなく独自にリサイタルを開いて出演料を得ています。
CD録音やテレビ出演などが仕事に加わる場合もありますが、楽器演奏者にとってコンサートは最も重要な仕事だけに、万全の準備を整えた上でコンサートの本番に臨んでいるのです。
具体的にはオーケストラでの演奏や室内楽を結婚式やパーテイーで演奏、歌謡曲のバック演奏、ミュージカルの演奏などなど。
2.楽団員やソリストの間でも収入に格差
クラシックのジャンルに限ると、それ以外の楽器演奏者は基本的にオーケストラに所属して演奏活動を行っているものです。
給料も所属するオーケストラから出されることになりますが、その額はオーケストラによって差も見られます。
日本を代表するオーケストラとして知られるNHK交響楽団は、楽団員の平均年収が1000万円と言われるほど高い給与水準です。
地方の交響楽団では平均年収が400万円以下の例も見られるため、国内オーケストラ楽団員にも平均年収にかなりの幅があります。
楽器演奏者の中でもピアニストやバイオリニストとして有名になった人は、単独でもコンサート出演やCDの売れ行きに応じた印税で収入が得られるようになります。
そうしたソリストの収入は知名度に大きく左右され、年収1000万円以上の有名ピアニストもいれば200万円以下の人もいるという世界です。
ソリストは一般の楽団員より演奏技術が優れていると認められた人たちですが、収入面では必ずしも優遇されているとは限らないのです。
3.楽器演奏だけでは生活が成り立たない人も
オーケストラの楽団員だけでも年収にこれだけ差があるのは、公益財団法人が多いオーケストラの運用形態や収入源とも無関係ではありません。
NHK交響楽団など給与水準の高いオーケストラは定期公演を始めとする事業収入に加え、民間企業や自治体からの助成金が収入源の多くを占めています。
助成金比率の低い独立事業型や地方型のオーケストラは全般に給与水準が低いため、中にはレッスン指導などの副業で収入の不足分を補っている楽団員もいるほどです。
それでもオーケストラの楽団員は公益財団法人の団体職員だけに、平均400万円から500万円という安定した年収が得られる点は恵まれていると言えます。
そうした団体に所属しない楽器演奏者の収入は不安定で、出演料が安いソリストだとコンサート演奏だけで生活を維持していくのは困難です。
4.音楽を通じて聴衆に感動を与えられる仕事
楽団員の中でコンサートマスターや各楽器の首席奏者は5%から10%ほどの手当が給料に上乗せされますが、担当する楽器の種類ごとに給料の差はありません。
ソリストとして活動している人はいずれも過去に国内外の著名な音楽コンクールで入賞した経歴を持ち、秀でた演奏技術と表現力を認められた演奏家です。
そうした人の中には海外の一流オーケストラと共演した経験を生かしてキャリアアップし、国際的知名度を高めて高収入に結びつけている例も見られます。
その一方ではそこまで飛び抜けた演奏技術を持たなくても、楽団員の1人としてコンサートに参加すれば自分の演奏を通して聴衆に音楽の素晴らしさを伝えられるものです。
たとえ収入が少なく生活が楽でないとしても、好きな楽器演奏を職業にできるならそれだけでも幸せだという楽団員やソリストの人もたくさんいます。
言葉を越えた感動を聴き手に与えられる楽器演奏者は、音楽好きの人にとっては最もやりがいのある仕事です。
5.音大や音楽系短大・専門学校で学ぶのが一般的なコース
楽器演奏を通じて音楽の素晴らしさを聴衆に伝えるためには、当然のことながらある程度の演奏技術や譜面を読むための基礎知識が欠かせません。
オーケストラの楽団員はもちろんソリストも多数の楽器演奏者と共演する機会が多いため、本番ではちょっとしたミスで演奏が台無しになってしまうという緊張感を持ちながら仕事をしています。
特に有名な音楽コンクールの入賞歴を持つピアニストやバイオリニストなどは、幼い頃から演奏を始めてしっかりとした音楽教育を受けてきたものです。
一方では中学校や高校の部活で吹奏楽部などに所属し、音楽の素晴らしさに目覚めたという人も少なくありません。
そのような人が楽器演奏者としてプロを目指すには、音楽理論も含めてしっかりと学べる音大や音楽系の短大・専門学校に進学するのが一般的なコースです。
オーケストラの楽団員として採用されるにはオーディションに合格しなければなりませんが、オーディションを受けるのもそうした学校で学んだ人が大半です。
収入の格差が大きい楽器演奏者の仕事
以上に見てきた楽器演奏者の収入や仕事の現状は主にクラシック音楽の分野に限定した話で、J-POPなどの分野はさらに収入格差の大きい世界です。
いずれも高収入を得るほど成功している人はほんの一握りに過ぎませんが、演奏活動で生活が維持できるだけの収入が得られれば、好きな音楽を仕事にできる点で恵まれた職業だと言えます。