
景気に左右されず安定した収入が得られる職業として、公務員は根強い人気があります。
そんな公務員の中でも採用試験の難易度が高いと言われる家庭裁判所調査官について、収入や仕事内容と職業適性について紹介します。
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1.国家公務員と同じ給与体系が適用
国家資格を要するような職業は収入の水準が仕事の難易度によってある程度決まり、高収入の職を得るには難関の試験に合格しなければならないのが一般的です。
その点で家庭裁判所調査官を含む裁判所職員は公務員の中でも採用試験が超難関とされている一方で、特別に高収入が約束されているというわけではありません。
国家公務員の特別職に属する家庭裁判所調査官には、行政職俸給表(一)という給与体系が適用されます。
初任給は院卒者区分の総合職試験に合格した場合が約24万円、大卒者区分では約21万円です。
採用試験の難易度が高くても初任給は一般的な国家公務員とそれほど大きな差はありませんが、能力次第では成績が評価されて年収アップにつながることもあります。
家庭裁判所調査官の平均年収は40歳で600万円程度に達し、一般的な会社員の年収を上回るようになります。
上司の評価によって昇給が可能な点では、企業と似た給与システムになってるのです。
2.家事事件と少年事件に関する調査
成績次第では一般企業の会社員より高い年収を得ることも可能なだけに、家庭裁判所調査官は公務員の中でも難易度が高い職業です。
家庭裁判所は1949年に家事審判所と少年審判所の統合によって成立した経緯もあり、離婚調停などの家事調停・審判と少年審判の2つを主要な取扱案件としています。
家庭裁判所調査官は裁判官の命令に基いてそれらの審判や調停に向けた調査を行い、書類作成や連絡調整・意見陳述・履行勧告などを行う職務です。
離婚調停の際には子の親権を巡る両親間の意見対立を調整し、子の意思を尊重して紛争を解決に導く重要な役割を果たします。
少年保護事件の審判では事件を起こした少年や非行に走る少年の調査・観察とともに面談も行い、彼らの更生に向けて最適な判断を下さなければなりません。
少年鑑別所や保護観察所などと連携を取りながら、心理テストなども駆使して犯罪や非行の背景を探るのも家庭裁判所調査官の重要な任務です。
3.トラブルを解決に導くやりがいのある仕事
離婚や相続など家庭内で発生した問題に対しては民事不介入の原則があり、警察は積極的に介入することができません。
そうした問題を放置しておくとさらに大きな事件へと発展しかねませんが、家庭裁判所が調停役を務めることで解決に向けて前進するものです。
特に離婚調停では子供の心情が無視された形で話し合いが進められるケースも多く、子供の意向を尊重した親権の選択や面会の取り決めを行うには客観的な判断を下せる第三者の視点が欠かせません。
少年事件を取り扱う場合でも事件を起こした少年の心情を理解し、更生に向けた取り組みへと背中を押してあげるのが家庭裁判所調査官の役目です。
心理学や社会学の専門知識を身につけた家庭裁判所調査官は、そうした困難な役割を果たすだけの能力を持っています。
家庭や少年事件に関するトラブルを解決に導くこの職務には充実感があり、一生の仕事として選択するのに相応しい職業です。
4.困難な職務と転勤の多さが宿命
人のために役に立ちたいと思っている人にとって家庭裁判所調査官はやりがいのある仕事ですが、どのような職業でも向き不向きはあります。
高い志をもって難関試験に合格し、家庭裁判所調査官として歩み始めたものの、予想以上に困難な仕事の壁に突き当たって悩む人も少なくありません。
離婚調停や少年事件の審判はいずれも当事者の人生を大きく左右する判断となりますので、担当する家庭裁判所調査官が実力不足だと最善の結果を導けない可能性も出てきます。
離婚後の親権決定には子の意思を把握する必要もありますが、心を閉ざしている子供から家庭内のデリケートな話題に関わる話を聞き出すことは大きなストレスとなります。
少年事件を調査する過程でも同様の困難が予想され、非行に走る少年の多くは大人に対して簡単には心を開いてくれないものです。
そうした困難に加え、家庭裁判所調査官は全国の家庭裁判所に配属される可能性があるため転勤が多いという宿命もあります。
5.採用試験の合格倍率は10倍前後の超難関
必ずしも希望する地域に勤務できるとは限らないだけに、結婚して子育てをするようになった場合でも家庭裁判所調査官は子供に転校を強いたり、単身赴任を余儀なくされたりする場合も想定しなければなりません。
そうした不便は国家公務員の特別職という役割上避けられませんが、その代わり安定した収入と充実した福利厚生が確保されているという安心感は得られます。
保険給付や休業給付・災害給付等の短期給付に加え、さまざまな福利厚生事業を行う裁判所共済組合が利用できる点や退職後の手厚い年金も家庭裁判所調査官になるメリットの1つです。
採用されるには裁判所職員採用試験の総合職試験に合格しなければならず、その合格率は院卒者区分・大卒程度区分ともに10倍前後の高倍率に達します。
筆記試験に加えて人物試験が重視されるのも裁判所職員採用試験の特徴で、他人の人生に大きな影響を与える職務だけに採用試験の段階で人物適性が厳しくチェックされているのです。
難易度が高いが、能力次第で高収入を目指せる家庭裁判所調査官
事件の調査を行うという点では警察官や検察官の職務とも共通していますが、家庭裁判所調査官は家庭内の紛争を調停し、事件を起こした少年を更生させるという点で大きく異なります。
心理学等の知識を駆使して警察のカバーしきれない問題を解決に導く家庭裁判所調査官には、誰もが納得する優秀な人材を選ぶ必要があります。